
なぜ、療育は早い時期からと言われるのだろう?
これまで、たくさんの子どもたちと出会ってきました。どの子にも、その子ならではの得意なことや素敵なところがあります。そして、誰にでも、その子なりの苦手なことや難しさがあります。
では、誰にでも苦手なことがあるのに、なぜ「療育は早い時期から」と言われるのでしょうか。
私は、その理由の一つに、発達がゆっくりな子どもを取り囲む大人が、「この子は、どんなことを心地よく感じ、どんなことを難しく感じるのか」を早くから知ることの大切さがあるのではないかと考えています。
なぜなら、大人は知らず知らずのうちに、周囲の子どもや一般的な発達の目安と比べながら、「できるようになってほしい」と、その子の成長を急いでしまうことがあるからです。
「その子のことを理解して、環境や関わり方を工夫できるのであれば、療育に通わなくてもいいということ?」
そうした場合もあると思います。ご家庭や園で、その子に合った環境や関わり方を工夫できることは、とても大切です。一方で、専門的な視点を通して子どもの姿を捉え直したり、関わり方を一緒に考えたりすることで、新たな気づきが得られることもあります。
子どもに合った環境を用意すること。その子に伝わりやすい言葉で伝えること。苦手なことだけでなく、得意なことや好きなことにも目を向けること。そうした理解が周りにあることで、「どうしてできないの?」と繰り返し求めるのではなく、その子に合った方法で、安心して経験を積み重ねていくことができます。
けれど、自分とは異なる感じ方や困りごとを理解することは、決して簡単なことではありません。
例えば、大人にとっては何気ないことでも、子どもにとっては難しさを感じる場面があります。大きな音が苦手だったり、見通しが持てないと不安になったり、言葉で気持ちを伝えることが難しかったり。その姿を見て、「どうしてできないのだろう」と考えることもあるかもしれません。
けれど、子ども自身は、どうして難しいのか、何があれば安心できるのかを、まだうまく言葉にできないことがあります。だからこそ、子どもの姿を丁寧に見つめ、専門的な知識や視点を通して、その子の感じ方や困りごとを理解していくことが大切なのだと思います。
「この子は、こうすると安心する」「こう伝えると分かりやすい」「今は少し待った方がいい」「ここなら、もう一歩挑戦できそう」
そんなふうに、一人ひとりの姿を丁寧に見ながら関わってくれる大人がいること。それは、子どもにとって大きな支えになるのだと思います。
療育は、子どもに「できるようになること」だけを求める場所ではありません。その子を理解する大人を増やし、その子に合った環境や関わり方を一緒に考えていく場所でもあるのだと思います。
早くからその子を知る大人が増えること。そして、その子に合った方法で「わかった」「できた」「やってみたい」という経験を重ねていくこと。その積み重ねが、子どもの安心や自信につながり、これからの成長を支えていくのではないでしょうか。
子どもに何かを求める前に、その子のことを知る。どんなことが好きなのか。何に心を動かされるのか。どんな場面で難しさを感じ、何があれば安心できるのか。
その子を知ろうとする大人が増えることで、子どもは「わかってもらえる」という安心の中で、自分らしく経験を重ねていくことができるのではないでしょうか。
療育が早い時期から大切だと言われる理由の一つは、子どもが困りごとを抱えてから対応するのではなく、早い段階からその子の感じ方や育ちを理解し、周りの大人が一緒に関わり方を考えていけることにあるのだと思います。

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